クリエイティブノート

ニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションをはじめ、
優れたクリエイティブな世界をお届けいたします。
あなたの身近なところに歴史的にも優れたデザインやアートがきっとあるはずです。


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Yves Klein イヴ・クライン(フランス)

世界中で有名なアーティストが、日本の和のこころに魅せられた、そんな言葉をよく聞きます。庭園・水墨画・建造物に着物など、日本には世界に誇れる「美」があります。

今回ご紹介するアーティストのイヴ・クライン。彼が魅せられた日本の美は、「柔道」でした。

1928年、地中海の海と紺碧の空が美しいフランス・ニースに生まれ、18才で薔薇十字団に入ります。ニースの警察の開いていた柔道教室に通い、1952年に来日、当時欧米人としては最高位の柔道四段を取得しました。

来日した際、魚拓・力士の手形・「原爆の影」に触れ、この作品にも影響を与えたと言われています。

フランス帰国後、柔道場のようなスペースで、自作のモノトーン音楽を流し、全裸の女性たちに「インターナショナル・クライン・ブルー」を塗り、布や紙に身体を押し付ける公開パフォーマンスを行いました。そしてこの絵が出来上がったのです。

「黄金よりも高貴な青」と呼ばれる「インターナショナル・クライン・ブルー」で作られたパフォーマンス作品に、彼が日本で学んだ柔道の精神と人体の感覚が隠れているような気がします。



2012/9/29

BrittBonnesen ブリット・ボネンセン
(ノーマン・コペンハーゲン社・デンマーク)

テーブルに置かれたグラスが、ユラユラっと揺れた場合、あなたはどう思いますか?
「こぼれる!」と不安に思うでしょうか、それとも「おもしろい!」と思うでしょうか。

このロッキンググラスは、あえてユラユラ揺れるようにデザインされています。もちろん簡単にこぼれたりしません。もともとの発想は、1950年代、飛行機がまだプロペラだったころに、機体が揺れても飲み物が水平に保たれるグラスをリプロダクトしたものなのです。

丸いフォルムが特徴的で、底面にアーチがあり、氷とドリンクを注ぐとカランカランと心地良い音がします。このグラスのデザイナーであるブリット・ボネンセンは、デンマークのガラス職人である祖父と父を持ち、10年間のアパレル業界での仕事を経て、世界各国のあらゆるデザイン・ファッションからインスピレーションを受けています。彼女は、硬いガラス製品をまるで生き物のようにやわらかく表現しています。ニューヨーク近代美術館(MoMA)のカフェでは、デザートを入れる器として使用されています。

「グラスはテーブルに垂直」という当たり前の概念に、ちょっとした変化を加えることで、美しく機能的なアートが生まれユーモアのある食卓を演出してくれる、そんな不思議なグラスです。


2012/8/31





カスティリオーニ兄弟(イタリア)
ピエル・ジャコモ・カスティリオーニ&アッキーレ・カスティリオーニ



(1913-1968年/1918-2002年)

ピエルとアッキーレの兄弟によるデザインユニット。彼らは、日常から呼び起こされたアイデアを、普通に手に入り、最小数最大限に表現できる素材を使ってデザインしてきました。

1962年には、フロス社の設立と共にデザインにおける責任者として、同社に招かれました。

アッキーレは、1956年に発足したインダストリアル・デザイン協会の文化活動にも積極的に参加しており、「イタリアデザインのマエストロ」「革新的工業デザインのパイオニア」などと称されています。

今回ご紹介するのは、彼らの代表作「アルコ」です。
アルコとは、イタリア語で「弓」を表し、曲線が美しいこの器具の名前として付けられました。

このランプは、当時「天井から吊り下げる方法ではなく、テーブルを照らすか」という問題を解決するために考案されました。あれこれと手を尽くした兄弟は、街頭からヒントを得て、このデザインが誕生したと言われています。

贅沢にも大理石で作られたベース、圧倒的な存在感のステンレスポール。二重構造になったシェードは、テーブルランプの機能だけではなく、上部に空いた丸い穴から洩れる明かりが天井に映し出され、美しく幻想的なライティングを生み出します。

「明かりを照らす」概念を一新させ、インテリアの主役でありながら空間の調和がとれる素晴らしいデザイン。今や近代デザインの古典的存在となり、世界中のファンを魅了しています。

2012/7/30

Alvar Aalto アルヴァ・アアルト(フィンランド)

(1898年2月3日-1976年5月11日)

フィンランドが生んだ20世紀を代表する世界的な建築家、都市計画家、デザイナー。
その活動は建築から家具、ガラス食器などの日用品のデザイン、絵画までと多岐に渡る。

この柔らかく自由な曲線が美しいフラワーベース。
湖のような切り株のような形。アアルトの父が地図技師であったことを考えると、等高線のようにも見える。
この形のモチーフをアアルトは明言していない。

彼のスケッチには、3つの鉢植えを有機的な曲線でつないだものがある。その線こそがアアルトの真髄ではないだろうか。
彼は、モダニズムの合理性を理解しながらも、直線より、柔らかく自由な曲線を好んだ。そんなアアルトの精神を象徴するかのように、このサヴォイ・ベースは美しさを放ち続けている。

2012/6/29

HALO

HALOは、1976年に創設された英国発のファニチャーブランドです。
アンティーク家具の伝統と、革新性のあるモダンデザインの融合に魅力があります。
代表的なラインであるトランクコレクション。旅をコンセプトに、ヴィンテージものからインスピレーションを得た独特な作品が多数あります。

その中のひとつ「キリム」。
キリムは、西アジアの遊牧民によって織られてきた伝統的な織物です。
幾何学のモチーフは、さまざまな意味を持ち、独創的なカラーやデザインは芸術品とされています。
つづれ織りによるキリムの生産量は、1日10cm。また、数百の鋲(ビョウ)も手作業で打ち込まれるため、ひとつのアイテムの制作には丸3日が費やされます。
デザインと素材、そして製造に至るまで全工程に込められたこだわりの美意識が使い手へまで伝わってくるような作品です。

2012/6/1